令和3年7月 夕凪グループ勉強会

令和3年7月 夕凪グループ勉強会

令和3年7月16日(金)
講師:医療法人社団以和貴会 いわき病院
中村 光夫 先生

「認知症疾患の理解」

今回は、認知症疾患医療センター共催でいわき病院の中村医師により、認知症疾患の治療薬と、現在認知症ケアの現場でも話題の『ユマニチュード』についてご講演をいただきました。

1.認知症治療薬について

 認知症治療薬ADUHELM(アデュカヌマブ)
アルツハイマー病の病理に作用する治療薬として、米国FDAより迅速承認を取得した治療薬である。
アルツハイマー型認知症において、アミロイドβの脳内蓄積が根本的な原因であり、このアミロイドβ自体を減少させることができる(=認知機能の低下を抑制することができる)のがADUHELMである。臨床試験において、ADUHELMは18カ月でアミロイドβの蓄積を59~71%減少させている。

現在の問題点としては、薬剤単価が高い事(4週間に1回の点滴投与で年610万円)と、臨床試験の対象が現時点では初期や予備軍であり、中等度か重度の認知症についての適応が困難であるとのことであった。

2.ユマニチュードについて

◎フランスで生まれた認知症ケアの技法
◎『相手の人間らしさを尊重し続ける』という哲学に基づき、優しさを伝える技術

 ケアの実施にあたっては、①見る ②話す ③触れる ④立つ 
を基本として、これらを組み合わせて複合的に行う。

認知症の患者の特徴として、
・失語:言葉が出ない
・失行:物の使い方が分からない
・失認:近所で道に迷う

この3つに加えて、最近では『注意の障害』が注目されている。例えば、必要な所に注意が向けられない・気が散る・いくつかの重要な所に注意を分けて向けることができない…といった行動がある。さらに、『社会的認知の障害』も最近臨床において注目されている問題である。社会的認知とは、他者の怒りや悲しみ、恐怖など相手の気持ちや表情を推し量るのが健常な高齢者と比べて難しくなる。ユマニチュードは上記のような認知症の特徴に沿って他者とポジティブな関係を築くことが出来る技法である。

◎ユマニチュード4つの柱

①見る:正面から、近く、水平に、長く見る

・同じ目線の高さ→見下ろされていると感じさせない・二人の関係が平等であることを示す
・正面から→率直さを示し、信頼を得る
・近くから長く→親近感を示す・アイコンタクトは0.5秒以上
・視野に入って話しかける→相手の視野に遠くから入って、ゆっくりと近づく
*視野を掴みに行く(大事!)→相手の視野に入るよう自分の位置を変える(驚かさない!)

②話す

・歌うように→低めのトーン・柔らかな抑揚 ×イライラすると声が高くなる‼
*ポジティブな言葉で(大事!)→自分が行っていることが楽しく心地よいと感じてもらう
まずは、相手の良い所を見つけて話し合う(関係作り)
・途切れなく→相手が言葉を返してくれない時は動作の実況をする

③触れる

・広い面積で→単位面積あたりにかかる力の軽減・痛くない
・包み込むように→愛情を示す・掴まない
・ゆっくりなでるように→痛くないように

④立つ

・1日合計20分立つ時間を作る→『立つ』は人間らしさの表出の1つ
◎ユマニチュードの実践をDVDにて詳しく視聴した。
→YouTubeでも視聴可能
【全編】優しさを伝える介護の基礎とコツ フランス生まれの介護技術「ユマニチュード」 – YouTube

夕凪グループのご利用者様の中にも認知症と診断された方が多数ご利用しております。

認知症ケアについて、今回のユマニチュードはかなり効果的であると感じる場面が多々ありました。今回の勉強会で得た知識と技術をさらにサービスの現場で深めていき、ご利用者様・ご家族様に情報提供していくことで、よりよいサービスを提供できるようになると思います。

今後も新たな知識を得ながら、グループ全体で知識を深め、実際の現場の中で実践していくことで、さらなるサービスの質の向上に努めていければと思いました。


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